名古屋高等裁判所金沢支部 昭和33年(う)87号・昭33年(う)90号・昭33年(う)91号・昭33年(う)89号・昭33年(う)88号・昭33年(う)86号 判決
職権を以て原判決における被告人川原賢三、同荒井竜男に対する各追徴金額につき審按するに、被告人川原賢三は被告人沼田繁盛より現金弐万円の供与を受けたものであること前認定のとおりであるが、右供与は其の金員の一部を更らに他の選挙運動者たる被告人荒井竜男等三名にも供与すべき負担付であつたゝめ(原判決には斯ような負担付供与の説示はないけれども原判文全体より同趣旨と認められる)被告人川原賢三は其の後被告人荒井竜男、同宮川吉松及び川原達雄と協議の上右金弐万円のうち、金七千円を被告人荒井竜男に、金四千円を右川原達雄に、金参千円を被告人宮川吉松に各配分し残額六千円は被告人川原賢三自身が之を保有し、同被告人は右六千円のうちより原判示第一、三記載のとおり候補者加賀谷幸作のため投票並びに投票取纏等の選挙運動の報酬として南みわ、王畑定吉に対し各金弐千円、瀬戸節子に対し金壱千円を供与し、其の残額壱千円に自己の所持金壱千円を加え、瀬戸さとに対し、同候補者に投票したことの報酬として現金弐千円を供与したものであること、又被告人荒井竜男は前記のとおり被告人川原賢三より供与を受けた金七千円のうちより原判示第二、二、イ、ロ、ハ記載のとおり同候補者のため投票依頼の報酬として南栄蔵、市川市三、市川佐知子の三名に対し各金壱千円合計金参千円を供与したものであることは被告人川原賢三、同荒井竜男の司法警察員に対する各供述調書、南みわ、王畑定吉、瀬戸節子、瀬戸さと、南栄蔵、市川市三、市川佐知子の検察官に対する各供述調書謄本により認め得るところである。而して記録によれば原判決は被告人川原賢三は原判示第一、一記載の現金合計弐万二千円及び価格一千円相当の菓子箱の供与を受けたものとして、其の合計額二万三千円の、又被告人荒井竜男は右に認定した金七千円の供与を受けたものとして同額の各追徴を言渡したものであることが明らかである。併し乍ら公職選挙法第二百二十四条後段の追徴に関する規定は金員の供与が他の選挙運動者にも分配供与すべき旨の負担付である場合には其の負担の趣旨に従つて支出された金額は、これを控除して追徴を命ずる趣旨と解するのが相当である。然らば本件においては被告人川原賢三の被告人荒井竜男に対する供与額七千円、被告人川原達雄に対する供与額四千円、被告人宮川吉松に対する供与額三千円、南みわ、王畑定吉に対する供与額各二千円、瀬戸節子に対する供与額一千円、瀬戸さとに対する供与額二千円中一千円合計弐万円は被告人川原賢三が自己の受供与金員より支出したものであること叙上認定のとおりであるから同人の受供与総額弐万参千円より之を控除すべく、同被告人に対する追徴額は金参千円が相当である。又被告人荒井竜男については同被告人の受供与額七千円より、同被告人の南栄蔵外二名に対する供与額合計参千円を控除した残額四千円が同被告人に対する追徴額である。そうしてみれば原判決には事実の誤認はないけれども被告人川原賢三に対し金弐万参千円、被告人荒井竜男に対し金七千円を各追徴する旨言渡した原判決は追徴に関する法令の適用を誤つたものであつて此の誤は判決に影響することが明らかであるから、原判決は此の点において破棄を免れない。
(裁判長判事 山田義盛 判事 沢田哲夫 判事 辻三雄)